戦闘的かつ挑発的に描き出される、矛盾に満ちた世界とのギリギリの対峙の瞬間。
つっかかり、咬みつき、ノドをすり切らせて吠えまくる。
その牙はときに自分にさえむかい、血を流す。
抑えのきかないmad dog ?いや、スズモクの内面は繊細で、端正だ。
「ぼくはよく、“ マジメなんだよ、オマエ! ”と言われます。前は治したいと思ってたけど、無理だなと。
これからもますますマジメでいくことにします!」
不器用な純粋性で満たされた、フルアルバム。
“ 手がつけられない”と、問題から逃げている自分の内面を直視することを迫ってくる。
罪という尺度をとび越えて、魂の重さを問いかけるM1「モンタージュ」。ひとけのない新月の駐車場、
なにもない地点からのリスタートをうたうM10「真夜中の駐車場」。
音楽的自傷行為にさえ見える、痛烈なM2「蛹-サナギ-」M4「鴉が鳴くから」。
誰かが躊躇して出さなかった言葉をそのまま心の声でつづるM8「どうした日本」M11「僕らは人間だ」。
そんな攻撃力の強い曲たちのすきまに、ふと咲くようなメロディにも心を動かされる。つきぬけるようなM7「ブルーブルー」。
そしてM12「リエラ」のひたすら明るい声。
カクゴを決めた男のラブソングにはウワッツラなものが見あたらず、
心苦しいほどにせつなくなる。つきつめた人間だけがたどりつく、すくいと美しさ。
2007 年のデビュー以来、スマッシュヒットを飛ばしてきた彼が出す初のフルアルバム(意外にも!)となるこの作品。
録音を通じて彼は、いかに自分がからっぽであるかを痛感する作業をし終えたように見える。
アルバムを聞き終わったとき、彼とおなじ地平におそらく立っている自分に気づく。そこは無であるかもしれないが、虚無ではない。
からっぽであることの、強さ。キュビスム。
醜さも、くだらなさも、すくいも、彼は同じ平面に描いてみせた。
今の世の中が陥っている、コリカタマった画一的視野への反逆。
その絵は後生大事にとっておくものでも、ましてやオークションにかけるべきものでもない。
彼はそのカンバスにぬりこめた現実を、いよいよぶち破りにかかる準備を整えたように思える。
ふと気づけば、我々も共犯者になっているのだ。
“ 覚悟はいいかい? ”彼が、ためらいがちな笑顔を見せたような気がした。
Tracks
1.モンタージュ
2.蛹-サナギ-
3.ノイズ
4.鴉が鳴くから
5.メンドクセーナ
6.平々-ヘイヘイ-
7.ブルーブルー
8.どうした日本
9.真面目な人
10.真夜中の駐車場
11.僕らは人間だ
12.リエラ
※初回限定盤のみ MV DVD付
「モンタージュ」「リエラ」「真夜中の駐車場」
「蛹-サナギ-」「真面目な人」
APPR-3007/8
¥2,857(tax out)